【中野人インタビュー】中野区伝統工芸保存会会長・熊澤吉治さん

6月8日(金)~10日(日)、「第27回中野区伝統工芸展」が中野区産業振興センターで開催されます。毎年6月に行われている同展は、中野区内で活躍する伝統工芸職人による東京手描友禅、型紙彫刻、江戸べっ甲や陶芸などの作品展示と即売会です。

主催する中野区伝統工芸保存会をたばね、会長を務めている東京手描友禅職人の熊澤吉治さんに、
友禅の魅力や、今年の伝統工芸展の見どころについて、お話いただきました。

「日本三大友禅」のひとつである「東京友禅」
知名度をあげるのが今後の課題

父親が東京手描友禅職人だったため、家の手伝いをしているうちに自然と跡を継ぐことになった熊澤さん。「私が手掛けるのは古典柄をモチーフにしたオーソドックスな手描友禅です。作家さんになると奇抜なものを作る方もいますが、私の場合は茶道のお得意さんが多いものですから、季節ごとに着たい、数多く持ちたいという要望があるのでオーソドックスな柄のものが多いんです。

実は東京友禅は京友禅、加賀友禅と共に『日本三大友禅』のひとつです。ただ、京友禅、加賀友禅に比べ、東京手描友禅の知名度はまだまだというのが現状です。

京都と加賀には大きな着物の問屋さんがあるため、日本各地のデパートや展示会場で京友禅展、加賀友禅展といった催しを数多く行っています。ですから、全く着物を知らない人でも自然と目や耳から入ってきて、京都、加賀には友禅というのがあるんだなというのがわかるんです。

それに対し、東京には大きな問屋さんがありません。仕事を出してくれる問屋さんがないので、自分で何とかするしかなく、ギャラリーを借りたり、または自宅をギャラリーにしたり、ネットで作品を紹介したりしながら自分で販売を行っています。そのため、着物を知らない人は東京友禅を目にすることもないというわけです。

東京友禅は日本三大友禅のひとつにもかかわらず、東京で友禅をやっている人が本当にいるの?と言われてしまうほど、知名度が高くありません」

 

伝統工芸を手がける若い女性が増えてきている

熊澤さんが手がけた美しい絵柄の着物たち

 

「友禅」というのは着物の染色方法のこと。そして手描友禅は職人さんがひとつひとつ丁寧に手で模様を描き出した染めのことを言います。さまざまな技法があり、引き継がれてきた独自の技も使うため、職人によって全く異なったものを作り出されるのが大きな特徴です。

「我々で代々伝わる伝統工芸を守っていきたいと考えていますが、実際はなかなか難しいのが実情。私の父の時代は5年は奉公、1年はお礼奉公、6年で独立といっていましたが、今はそういう徒弟(とてい)制度が成り立たないんですね。なぜなら、昔は奉公して独立した時、親方のお得意先を回してもらえたのですが、今は親方が弟子に回せる仕事がないし、独立するまで面倒を見ることもなかなか難しい。男性が職人になっても家庭を築くのもたいへんなので、なり手もないんです。

そのため、中野区伝統工芸保存会をいつ止めようかな(笑)なんて思ったりもするのですが、最近では若い会員さん少しずつに増えてきたので、また盛り上げていこうという気持ちになっています。

中野区でも美大を出て、弟子になって、独立して頑張っている女性がいます。着物を着るのは女性ですから、女性が説明した方が説得力があるんです。だから、伝統工芸は女性の方が向いているのかもしれませんね」

6月8日(金)から始まる「中野区伝統工芸展」に
ぜひいらしてください

「現在、中野区伝統工芸保存会には27人が所属しています。東京手描友禅、東京無地染、型紙彫刻、曲物、和人形、佐賀錦、江戸べっ甲、組紐、江戸木彫刻、楽器オルゴール、竹工芸、陶芸をはじめ、友禅は6人、陶芸も何人かはいますが、ほかの業種は一業種、一事業所です。当然、年々高齢化していくので、伝統を守る難しさをひしひしと感じています。

6月8日(金)から始まる『中野区伝統工芸展』の会場ではさまざまな職人さんたちが作品を制作する姿を見ることができ、また製作過程の説明を聞いたり、体験できるものもあります。

中野区の職人さんが集まる伝統工芸品を間近で見るチャンスはそうありません。ぜひ『中野区伝統工芸展』へお越し下さい!」

お気に入りスポットは「多田神社」

熊澤さんの子どものころの遊び場だった「多田神社」がお気に入りのスポット

「私は生まれも育ちも南台ですが、南台はかつて多田町と呼ばれていました。
多田小学校も名称が変わってしまったので、今では多田の名前が残っているのが多田神社と多田会館ぐらいしかない。中でも多田神社は子どものころよく遊んでいた場所でお気に入り。子どものころはお祭りがあれば目を輝かせてましたね。
静かな境内には樹木がいっぱい生い茂っているので、散歩をすれば心が落ち着きます」

 


多田神社
住所 中野区南台3-43-1
アクセス 東京メトロ丸ノ内線「方南町」駅東口から 徒歩7分
http://tadajinja.tokyo/

 

 

 

 

 

 

 

今回の★なかの人

熊澤吉治(くまざわ よしはる)さん

1951年中野生まれ。父である祐雄さんの後を継ぎ、東京手描友禅の職人に。中野区伝統工芸保存会会長。平成22年度東京都優秀技能者(東京マイスター)知事賞受賞

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