【中野人インタビュー】哲学堂公園・植竹薫さん

中野区北部に東京ドーム約1.1倍の敷地を有する自然豊かな「哲学堂公園」は、区民の憩いや健康増進の場として親しまれています。園内を散策すると、あちこちにユニークなネーミングのスポットが点在! 日本のみならず世界にも類を見ない、このユニークな“哲学のテーマパーク”の成り立ちや見どころ・楽しみ方を、哲学堂公園 公園管理事務所の統括責任者・植竹薫さんにお話を伺いました。

 

哲学を視覚的に体感できる
77のスポット

「哲学堂公園は、哲学者で東洋大学の創立者である井上円了が明治37年、孔子・釈迦・カント・ソクラテスを祀った『四聖堂』を建立したのが始まりです。当初、この場所は哲学館大学(現在の東洋大学)の用地として入手されていましたが、諸事情があって大学の運営から身を引くことになった井上円了が、その土地に生涯学習・社会教育の場としての当公園を構想しました」

「四聖堂」(しせいどう)の前にある井上円了先生のリリーフ

井上円了が提唱する哲学とは「真理の探究(分からないことを解き明かす)」ということ。当時の学問といえば、読み・書き・そろばんといった実用的なものが一般的。物事に疑問を持って自ら考え、深く掘り下げるといった本質的な意味での学びは、市井の人々にはなじみの薄いものでした。「円了は、哲学を近代的な学びの基礎として位置づけ、固定的な社会通念やオカルト、迷信などによって引き起こされる人々の心の闇や不安を解明しようと努めました。哲学の普及活動に生涯をかけた井上円了のメッセージを、視覚的に分かりやすく体感できるのが哲学堂公園なんです」

園内にある77の建物や石造物などの場所が分かりやすく書かれている「哲学堂公園ガイドマップ」(1部210円) ※園内の管理事務所で販売

園内は主に3つのゾーンに分類。哲学的な時間と空間を表現した「時空岡(じくうこう)」、さらに唯心論と唯物論という2つの哲学上の立場をそれぞれテーマにした「唯心庭」「唯物園」があります。

「四聖堂」(しせいどう)は、哲学堂で最初に建造され、公園の中心となる建物。四面が正面で、本尊である唱念塔(しょうねんとう)は哲学の理想を表しています

 

三層六角形の赤い建物が特徴的な「六賢台」(ろっけんだい)

「この3つのゾーンに哲学に由来する多彩な建物や石造物、通路などが点在していて、“哲学堂七十七場”と呼ばれています。一部、現存していないスポットもありますが、一つひとつ順番に辿っていくと、井上円了の哲学観に触れられる構成になっています。中には、寺社建築のような伝統的な宮大工の技法を取り入れつつ、独創的なデザインに仕上げられた建物もあって、建築学的な観点からも興味深く楽しめます」

 

哲学は宇宙の真理を探究する学問ということから、哲学に関する講話または講習会を開催するための講義室として「宇宙館」が建てられました

平成21年には、ハンガリー出身の彫刻家ワグナー・ナンドールの作品を設置した「哲学の庭」もオープン。異なった文化を象徴する思想をつくり大きな宗教の祖となった人物、悟りの境地に達してそれぞれの社会で実践し成果を得た人物、現存する法律の主流をつくった人物として、代表的な歴史上の人物をモチーフにした彫像群を鑑賞することもできます。

 

公園をより身近に楽しめる
多彩なイベントも企画

哲学堂公園の今後の課題として、「地元の方へのアピールを今まで以上に強化したい」と話す植竹さん。その試みのひとつが「哲学堂公園講座」です。「井上円了研究の第一人者として知られる、東洋大学の三浦節夫教授を講師にお招きして、公園の歴史や創設者の井上円了について詳しく解説していただきます。次回は9月9日(日)開催予定です。参加は無料なので、興味のある方はぜひご参加ください」。また、来園者や地域の人々が主体となって活動する「哲学堂パーククラブ」は、いわば哲学堂公園のファンクラブ的な組織で、ガイド活動や園内の花壇育成活動などを行っています。「ガイド活動は公園の魅力を自ら学び、発見し、広くPRしていただくのが目的で、現在は10名ほどが継続的に参加してくださっています。2か月に一度、管理事務所の主催で開いている勉強会では、意見交換も盛んに行われています」

そのほか春期(ゴールデンウィーク期間)・秋期(10/1~10/30の土、日曜・祝日)のほか、毎月第1日曜には古建築物を公開。「哲学堂公園のランドマーク的な建物である六賢台の中に入り、上まで登れる貴重な機会です。小さなお子さまも上の窓から顔をのぞかせて手を振ったりと、参加者のみなさまに喜ばれています」

ちなみに今年は公園の完成からちょうど100年、さらに来年は井上円了没後100年と、アニバーサリーイヤーが続きます。それを記念して、公園の成り立ちについて絵本仕立てで分かりやすく紹介した子ども向けのコンテンツを東洋大学と共同で制作することや、読み聞かせイベントなども計画中なのだとか。「哲学堂公園は中野区にとって大切な文化的財産でもあると同時に、観光資源としても重要視されています。現在、ホームページでは東洋大学の学生と共同制作した七十七場紹介のビデオ作品を公開していますが、海外からのお客様の誘致を目的とした英訳版も準備中です。今後、地域の方々とも連携しながら、哲学堂公園の持つポテンシャルを最大限に生かし、魅力をさらに広く発信していきたいです」

お気に入りスポットは新井薬師エリア&中野駅前

新井薬師前エリアは、昔ながらの活気あふれる商店街が広がっているのが魅力。「元気があって温かくて、生活に密着した雰囲気が心地良いです。中でも商店街の中にある『メイハーネ オゼリ』というトルコ料理店はお気に入りです。中野駅前だと、中野サンモール商店街や中野ブロードウェイにもよく訪れます。脇道に一本入るとたくさんの飲食店がひしめいていてワクワクしますね。気になるお店が多すぎて、なかなか制覇できません(笑)」

 

 ★今回の中野人
中野区運動施設および哲学堂公園 指定管理者
日本体育施設グループ 統括責任者

植竹 薫(うえたけ かおる)さん

1975年11月8日生まれ。東京農業大学 大学院にて修士課程修了後、財団法人公園緑地管理財団(現 一般財団法人 公園財団)へ。国営公園の管理等の業務に携わった後、2012年に日本体育施設株式会社へ。哲学堂公園、妙正寺川公園運動広場、上高田運動施設の運営管理を手掛けている

 

 


哲学堂公園

住所 中野区松が丘1-34-28
アクセス
【電車】 西武新宿線「新井薬師前」駅から徒歩12分、都営大江戸線「落合南長崎」駅から徒歩13分
【バス】 JR・東京メトロ「中野」駅から江古田駅行きまたは池袋駅行きバス乗車<約11分>「哲学堂」下車、練馬駅行きまたは江古田の森行きバス乗車<約8分>「哲学堂下」下車

TEL 03-3951-2515

開園時間 3~6月、9月=8:00~18:00、7~8月=7:00~18:00、10~11月=8:00~17:00、12~2月=9:00~17:00

休園日 年末(12/29~12/31)

http://tetsugakudo.jp/

 

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