【新井薬師】"中級編"中野区学芸員博士オススメの回り方(哲学堂公園)

中野区学芸員博士オススメの回り方

中野区では歴史的に価値のある文化財を守る活動をしており、今回は歴史民俗資料館館長でもある学芸員博士の比田井克仁さんに哲学堂について気になることや、オススメの楽しみ方を聞いてきました。

tetsugakudou

優しく穏やかな笑顔が印象的な比田井さん

 

Q:文化財というとあまり聞き馴染みがありませんがどんなお仕事をされているのですが?

「文化財関係の仕事を全てしています。中野区には実は遺跡がたくさんあり、区民のみなさんが家を建てる時にはその土地の下に文化財や遺跡が埋蔵されていないかの調査をしたり、歴史的に価値があるものがないかを調査して指定文化財に認定したり。認定するのものは、哲学堂のような建物から、掛け軸、土器など様々です。」

 

Q:哲学堂ってどうしてできたのですか?

「哲学堂は明治の終わりにできた公園です。明治は江戸幕府が倒れていった時代。
明治の終わりになると“このまま日本はどうなっていくのか。西洋に染まっていき、これまでの日本ではなくなっていくのではないか”と心配する人たちが出てきた。柳田国男さんやこの公園を作った井上円了さんなどがその代表です。
そんな中で井上円了さんは、当時哲学は西洋のものだとされていたが、東洋にも西洋人と同様に考えている人もいて、哲学とは世界全体のものだと気がついた。それをみんなに知らせたいが、哲学は難しいので、わかりやすく伝えるために公園として作ることにしたのです」

 

 

Q:哲学っぽい建物やスポット以外にもテニスコートなどもあるのはどうしてですか?

「井上円了さんの“哲学とは人生に必要なもので、勉強だけではなく、運動をすることも必要だ。”という考えに基づき、作られています。円了さんは、生涯をかけて土地の購入からはじめ、コツコツと公園を作っていきました。そして、その最後に“哲学を学ぶためには元気な体が必要だから、大人も子供楽しめるスポーツとしてテニスコートを作って欲しい”と息子に伝えて、息子の時代にテニスコートができたと言われています。野球場は、息子がテニスコートのついでに作ったようです」

Q:土地購入から始めるなんて円了さんは根気がありますね・・・

「そうですね。井上円了さんは、東洋大学の創始者でもあります。東洋大学は当時、学校の先生になる資格は国が建てた学校でしか出せなかったのですが、それを日本で初めて私立大学から出せるようにした4大学(東洋大学、國學院大学、慶応大学、早稲田大学)のうちの1つです。ですが、その記念すべき1回目の試験問題に「目上の人を弑逆(しぎゃく/殺すこと)するのは正しいかどうか」と言う設問を出したことがきっかけで、当時の政府から目をつけられてしまいます。
当時の日本では目上の人に従うのは当たり前のことだったからです。その当たり前のことを覆そうとしているのかと政府に目をつけられてしまったのですね。この考え方は、当時、イギリスを中心に世界で話題になっていた考え方だったのですが、日本では少し早かったのかもしれません。また時期が悪いことに、政府が大学に問いただしていた時期に学長の円了さんは海外外遊中でいなかった。知らせを受け取って帰国した時には、もうどうにもならない所にまで来ていて、大学を守るために責任をとって辞任したと言われています。
本来は大学でやろうと思っていたことができなくなったので、純粋に物事を考える場所を作ろうとしてこの公園を作ることにしたと言われています。土地購入の費用は大学の退職金や各地で公演をして資金を稼いだりとして、本当にコツコツと作った公園なのです。」

=========    井上円了さんの生涯と哲学堂公園の成り立ち =========
・1899年に土地を買い始める
※そこから約20年の間にほぼ完成し、残すは運動施設のみと状態にまでなった
・1919年に井上円了さん中国大連にて死亡
・1921年に息子によってテニスコート完成
・1931年に息子によって野球場も完成

Q:広い園内ですがオススメのルートやスポットはありますか?

「まずは、入り口とも言える“哲理門の天狗と幽霊”ですね。物(天狗)と心(幽霊)が我々の世界には存在している。それを考えようというメッセージでもあります。
そして次に向かって欲しいのは物の象徴としてある“唯物園”です。唯物園には水が流れている。神秘洞と言われる場所から水が流れている。水がないと物は生まれない。水はすべての根源であることを表現しています。
その先にある“唯心庭”では、ココで心を学ぼうと言われています。
まずは“物”として生まれ、そこに“心”が伴う。だけどそれではまだ不十分で、私たちが人間としてあるためには、“時”と“空間”が必要だと円了先生は考えていました。
そこで、唯物園と唯心庭をさらに進み、丘の上にあがっていくと“時空岡”と言う建物がたくさん立っているメインエリアに到着する。時間がないと人は動かないですからね。
ただし、時間だけあっても空間がないと人は動くスペースがない。そしてその時間と空間の上には宇宙があるとして、“宇宙堂”を作ったと言われています。
円了先生の考え方をなぞるように散歩をするとしたら、哲理門→唯物園→唯心庭→時空岡→宇宙堂の順に見ていただくのがオススメですよ。」

Q:その他、あまり知られていない楽しみ方はありますか?

<哲学堂せんべい>というものが、哲学堂公園の売店と区役所の1階の売店で売られています。このおせんべい、美味しいのはもちろんなのですが、パッケージに注目していただきたい。パッケージには“真理の探究”というメッセージが書かれていて、これこそが円了先生が大切にしていた教えでもあります。一見しただけでは気がつかない人もいるので、お土産として買って誰かに渡してみるのも面白いですよ。
そうそう77種類のスポットについての地図も公園の売店では売っているのでそれを元にゆっくり散歩をしてみるのもいいですね。」

tetsugakudou

哲学堂せんべい(1枚110円)

園内にある77の建物や石造物などの場所が書かれている「哲学堂公園ガイドマップ」(1部210円) ※園内の管理事務所で販売

 

tetsugakudou_外観哲学堂公園

◾住所:東京都中野区松が丘1-34-28
◾アクセス:西武新宿線「新井薬師前駅」から徒歩12分
都営大江戸線「落合南長崎駅」から徒歩13分
http://tetsugakudo.jp/

PAGE TOP